母は偉大です

気がついたら母が再婚した年齢になっていました。

私の父と離婚した母は、ずっと仕事をし、独りで暮らしていました。経済的にも精神的にも自立していた母ですが、50代後半になって、再婚することを決めたのです。共通の知り合いを通して紹介された男性と、あっという間に結婚しました。当時未婚だった私の妹に「お先に。」って言ったりして、妹を悔しがらせたりする母でした。

再婚を決めた理由はいろいろあったのだと思います。

自分のこれからの人生のことを考えたのでしょう。

母はずっと仕事をしてきました。仕事をしていなかったのは産休の時だけとよく言っていました。60歳定年の仕事でした。

私が14歳の時から離れて暮らしている母は、時々会う年の離れた姉のような存在でした。母と一緒にいると、自分も大人の女性の仲間入りができたような気がしていました。その母が、私に寄りかかってくるなんて想像もしていませんでした。

ひとりで老後を迎える不安からか、「私が死んだら墓地の申し込みをして欲しい」と私に言ってきました。その時のことを鮮明に覚えています。まだ若くて、自分のことだけで精いっぱいだった私にとっては、母が急に重たくのしかかってきた感じがして、思わず「精神的な負担の面倒はみられない」と言い放ったのを覚えています。ひどい娘です私。

それからすぐに母は再婚しました。あとから聞くと、私に言われたことのショックで何日か眠れなかったそうです。

再婚は母が悩んだ末に決めたことです。娘がどうこういうことでもありません。そうはいっても、母がひとりじゃなくてよかったという想い以外にも、複雑な気持ちがありました。私のせいで…という自分を責める気持ち、自分勝手だと母を責める気持ち、そして母のパートナーに対しての批判や文句。

母は再婚後、わずか4年で病気になり、長い入院生活ののちに亡くなりました。認知症になった母は、にこやかで平和で、そしてちょっと意地悪でした。最後まで再婚したパートナーに愛され、大切にしてもらい、母はとても幸せな人だったと思います。

母から学ぶことがたくさんあります。人生の幸せってなんなのか。人の本質ってなんなのか。老いること、生きること、死を迎えること、そのすべて身をもって示してくれた私の母。

母は偉大です。今年は私の母の13回忌です。