コラージュを作ったことはありますか?コラージュは写真や文字を切り貼りしてひとつのイメージを作ります。コラージュの特徴は貼る写真などは必ずしも自分の撮ったオリジナルではなく、雑誌などから切り抜いた広告ページだったり、写真の部分だったり、本来写真を撮った人の意図とは関係なくトリミングされ、他のものと組み合わされて再構築されたものです。そして出来上がった作品は他の誰にも創造することが出来ないオリジナルの作品になるのがコラージュの面白いところです。
部屋づくりはこのコラージュづくりに似ています。部屋の中に家具やカーテン、照明、更には部屋の中で暮らすのに必要なものを入れていきます。それらはすべて長い時間をかけてあなたが選んだものを、部屋という箱の中で再構築したあなたの作品です。
1.コラージュとは
私は中学の美術の授業で、雑誌の写真を切り抜いてテーブルセッティングされたお皿に盛られた料理の上に、当時憧れだったkissaのシューズの写真を貼った作品を作ったのを覚えています。コラージュされた写真には、赤と白のチェック柄のテーブルクロス、今は亡き高田喜佐さんデザインのレースアップの履きやすそうな靴、出来上がったコラージュは明るく自由で快活なイメージでとても気に入っていました。コラージュは写真や文字を切り貼りしてひとつのイメージを作ります。切り抜いたものを貼り合わすことで再構成して、オリジナル作品を作る面白さがあります。
今思えば、当時の私が持っていた閉塞感と大人の女性やしゃれた暮らしへの憧れのようなものが表れていたようです。
1‐1アートとしてのコラージュ
コラージュは写真や文字を切り貼りしてひとつのイメージを作ります。切り抜いたものを貼り合わすことで再構成して、オリジナル作品を作る面白さがあります。
コラージュ(仏: 英: collage)とは現代絵画の技法の1つで、フランス語の「糊付け」を意味する言葉である。
通常の描画法によってではなく、ありとあらゆる性質とロジックのばらばらの素材(新聞の切り抜き、壁紙、書類、雑多な物体など)を組み合わせることで、例えば壁画のような造形作品を構成する芸術的な創作技法である。作品としての統一性は漸進的な並置を通して形成される。コラージュは絵画と彫刻の境界を消滅させることを可能にした。
Wikipediaコラージュより引用
アートの分野ではパブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックが、絵画に紙を貼ったり、ひとつの絵画の中に平面を重ね合わせて再構築する手法を用いたりして、新しい芸術の表現を生み出しました。《籐椅子のある静物》1912年 絵画史上最初のコラージュ作品
1‐2様々なコラージュ
アート作品としてのコラージュもありますし、アートとは関係なく願いを叶えるために自分で作るコラージュもあります。ビジョンマップとか、宝地図とか様々な名前で呼ばれていますが、これらは潜在的にある願望を視覚化することで気づきや目標が明確になるなどの効果があります。
更には、制作する間に体験する感情や出来上がった作品を分析して心理状態を観ていくコラージュセラピーという臨床心理療法もあります。
コラージュはアートでも、願望実現でも、セラピーでも、いずれの場合も自分自身の心や頭の内的なものを、写真等を選んで切り抜いて貼るという単純な行為で外側に表現することになります。切り抜いたひとつひとつに意味があるのと同時に、貼り合わせた全体から感じられるイメージに意味があります。
2.部屋づくりとコラージュ
部屋づくりとコラージュづくりは似ています。
部屋という箱の中に、家具やカーテン、照明、更には部屋の中で暮らすのに必要なものを入れていきます。家具も電化製品も自分の手で作ったオリジナルではないけれど、他のものと組み合わせることであなただけのコラージュ作品が出来上がっています。
紙面のコラージュと部屋が違うのは、部屋はその中に自分自身が入って体験することが出来ることです。別な言い方をすると、部屋は中に入って体験できる3Dコラージュです。
2‐1イメージを伝えるコラージュ
私はインテリアコーディネートの仕事をするなかで、お客様との初回打ち合わせの後に、イメージボードを作成します。お客様のご要望を視覚化し、次回以降の打ち合わせでイメージのすり合わせをするために作成するコラージュです。
自分自身で部屋づくりのためにコラージュを作ると、頭の整理出来、漠然としたイメージがまとまることで、自分の望みが明確になってきます。部屋づくりをする上で、自分がどうしたいかが視覚化されていると、迷いや不安が少なくなり、無駄な時間やお金を使わなくなります。また家族や専門家に相談したり協力を求めるときにも、相手に伝えやすく伝わりやすいので楽で効率的です。
2‐2部屋はあなたが選んだもので出来ている
部屋にあるものはすべて今よりも前にあなたが選んだもので出来ています。
今あなたの部屋にあるものは、家具もカーテンも、食器も電化製品も、靴も服も本もすべてあなたが選んだものです。その中には自分で選んで買ったものもあるし、実家から持ってきたものもあるでしょう。あるはいただもの、結婚した時に相手が持ってきたものもあるでしょう。
どのようにしてそこにあるのか思い出せないものもあるでしょう。それでも今現在あなたの部屋の中にあるということは、捨てられたり誰かに譲ったりすることもなかったという結果です。あなたが過去のどこかの時点で選んで、トリミングしてきて、部屋の中に再構成しているのが今の部屋です。
3.作ることを楽しめるのが一番
部屋づくりでもコラージュづくりでも、大事なことは出来上がったものを自分で分析することではありません。なぜならば分析してわかろうとすると、作ること自体が楽しくなくなるからです。
作ることは本来楽しいことであり、自分を表現したい、独創的でありたいという欲求は多かれ少なかれ誰もが持っているのではないでしょうか。
むしろ気づいていただきたいのは、作るときにあった体験です。楽しかった、わくわくした、イメージが広がりすぎて止まらないという体験かもしれません。
あるいは、なかなか選ぶことができなかったとか、何が正しい答えなのか考えてしまったとか、困惑したとかいう楽しさとは程遠い体験もあるかもしれません。それも体験です。
「自分の内側にあるものを、外側に表現し、形にする」
部屋づくりは、コラージュというあなただけの作品づくりです。
まとめ
コラージュも部屋づくりもアートとしてとらえると純粋な自己表現の創作です。
部屋づくりには、諸条件や様々なことを加味して考えることも大事です。ですが、美しく機能的な部屋をつくることよりも、その部屋で過ごすあなたと部屋がしっくりマッチしていて、そこで居心地の良さとそれによる幸せを体験していることが一番です。
どんなにセンスの良い住まいづくりのプロでもデザイナーでも、あなたの内的な世界を外から見ることは出来ません。
まずはコラージュで表現してみましょう。もっと部屋と仲良くなるために。