なつかしい人とあのときの私に会った。

作家向田邦子の没後40年イベントがあるのを知り、久しぶりに青山スパイラルに行く。

向田邦子は、憧れていた大人の女性のひとりだった。
手書きの原稿や、写真の展示を眺める。
あ あの人は…
目の前になつかしい人の姿。
その人は、本や雑誌でよく見かける。
最後に会ったのは、20年以上前かもしれない。
私はすぐにわかったけど、私のことは覚えていないかもしれない。
思い切って声をかけてみる。
覚えていてくれた。
「あ 青木さん?」
旧姓で呼ばれて、その名前だった私を思い出した。
20代で、インテリアの仕事がしたくて転職。
その人のような、クリエイティブな人に憧れていた。
なにものかになりたくて、もがいていた私。
その人とそのまま立ちばなし。
お互いの近況や、なつかしい人たちのこと。
どうしてこんなにうれしいんだろう。
同級生にあったみたい。
夢破れて、失敗感と焦りでいっぱいだった私の暗い時代。
あまり思い出したくなかった。
その人と話してるうちに、
なつかしい大好きだった人たち
刺激に満ちた日々
時代の空気感
勤めていた原宿のショップ
日当たりのいい中庭のベンチ
その場の匂いが感じられるくらい、はっきりと思い出した。
つらいだけじゃなかった。
楽しいこと、面白いこと、たくさんあった。
笑いもやるせなさもあった。
私はたしかにそこにいた。
ひたむきに、あきらめずに、生きてきた。
その人に会えたことで、失われた時代を取り戻せたような気がする。
私、今日までちゃんとやってきた。
会えてうれしい。
ありがとう。